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RAGTIME(ラグタイム)

〒215-0021
神奈川県川崎市
麻生区上麻生3-12-10

営業時間 11:30〜22:00
定休日:月曜・火曜

※ご予約は二日前までにお願いいたします。

TEL.044-954-0915

Summer

暑中お見舞い申し上げます。

5月に、店の前で初めてカモの引越しを見た後、6月にも海で、またカルガモの引越しに遭遇しました。
続く時は続くものだなぁと思っていると、6月の末に、朝、散歩に出かけようと家を出ると、駐車場に何か大きめのかたまりが二つ落ちているのを発見しました。近寄ってよーく見てみると、動いていて、見たことのない生きものでした。ネットで調べてみると、キジバトのヒナだということがわかりました。

今年は、植栽の剪定の時期が遅くなって木がこんもりしていたからなのか、そう言えばハトらしき鳥が飛んできていた気もしましたが、まさか巣作りをしていたとは!。ヒナが落ちていた近くの木を見上げてみると、羽の付いた巣、らしきものがずり落ちていました。
野鳥はそのまま自然にしておくべきなのか。でもこのままでは入ってきた車に轢かれるか、カラスやネコに捕食されてしまうので、軍手をして、空容器にそおっとヒナ達を入れ、巣のあった木の根元に置いてみました。
ふと見上げると、すぐそばに親鳥らしきキジバトが止まって、申し訳なさそうにこちらを見ているではありませんか!「大丈夫、私も沢山失敗してきたよ。」と声を掛けてその場を去りました。

2〜3時間ほどして様子を見に行ってみると、小さな空容器をひっくり返しそうになりながら、親鳥がちゃんとヒナを温めに来ていました!
その日から7月の約ひと月の間、ヒナの成長を見守る日々が続きました。
知り合いに、野鳥を守るお仕事をされていた方がいたのを思い出して、彼女に報告をしながらその都度相談にのってもらえたことは、心の支えでした。

はじめのうち親鳥は、ピジョンミルクをあげに何度もヒナのもとへやって来たり、雨の日に心配で見に行ってみると、自分は濡れながらもちゃんとヒナを抱き抱えていました。
厳しい現実にも直面しました。
ヒナを発見してから3日目の夕方、はじめからどことなく元気の無かったヒナの一羽の息が絶え、動かなくなっていたのです。 ネットで調べても様々なことが書いてあり、どう行動すべきか決心しかねていた時、相談にのってもらった彼女が「私なら土に還してあげます。」ときっぱりとしたアドバイスをしてくれました。
翌日、冷たい骸になったヒナを、勇気を振り絞って土に埋め、ふと気配を感じて見ると、すぐ近くに親鳥が止まっていて、悲しそうな、でも、「ありがとう」と言っている様な目で、こちらをじーっと見ていました。キジバトに、私がしていたことが全部見えていたのかはわかりませんが、言葉は通じなくても、心が通い合えた一瞬のように感じ、胸につかえていたズドーンとした錘が、すーっと無くなりました。

もう一羽のヒナは順調に成長し、親鳥が給餌に来る回数が段々少なくなってきても、ピーピーと自分の存在を必死にアピールし、親鳥が来てくれた時の、身体全体で狂おしいほど喜びを表す姿を目にするたびに、親子の強い絆を感じ微笑ましい思いでした。
この絆を崩さないためにも、命は助けたけれど、餌や水は与えない、と心に決めて見守り続けました。

10日ほど経った日、成長に合わせて替えたカゴ(巣)の縁にしばらぁく止まっていた後、ヒナの姿が見えなくなったので、もう飛んで行ってしまったのかと思っていると、巣のあった木の上の方で、親鳥と飛ぶ練習をしているような光景を目にしました。
相談にのってもらっていた彼女曰く、巣から出たら”巣立ち”というのだそうで、巣から出ても近くの木に結構いるのだそうです。
初めてヒナが羽ばたいている姿を目にした時は、わが子がはじめの一歩を踏み出した時と同じくらいの感動でした。

20日を過ぎた頃からは、止まり木の場所を変え、巣があった木の位置の反対側、丁度もう一羽のヒナのお墓の近くをウロウロするようになり、居心地がいいかもしれないけれど、このまま飛んでいけなくては大丈夫かな、などと心配したりもしました。
夕暮れ時、デッキの上に飛び乗ったり片足を上げて伸び?をしたり、お客様にも可愛い姿を何度か披露していました。

丁度一週間くらい前から、もうヒナの姿を見なくなりました。きっと元気に自由に空を飛びまわっているのでしょう。
植栽の剪定も無事に終えて、いつも通りのエントランスの風景。気が付かなければ出遭うことのなかった沢山のシーンを見せてもらった、夏のひと時でした。
ずっと相談にのってもらっていた彼女が、「キジバトの親子も、きっと忘れないと思います。」と言ってくれた言葉が、今でも心に響いています。